透明水彩はスケッチにぴったりの画材です。
重ね塗りをしない方がきれいな色が出せるので、即興で描くのに向いているのです。
今回は、透明水彩で夏の入道雲をスケッチてみました。
それでは、描き方に移っていきましょう。
線を描く
スケッチでは、線画をボールペンで描くことをおすすめします。
線画がくっきり見えていると、その時点で形が固まっているので、色が線をはみ出しても何を描いているかがわかります。
逆に、線を薄くする場合は、絵具で形を表現する必要がありますので、ある程度の丁寧さが求められます。
今回は、鉛筆でアタリをとってから、耐水性のゲルインキボールペンで形を描きました。
線画のコツは、形を描きすぎない、です。
特に今回は雲を描くので、できるだけふんわりとした感じを出したいのです。
その場合、あまり長い線や直線を使わず、頼りない線で描くようにします。
自然物を描くときは頼りない線が大変有効です。
これは自然界に直線はそうそう見当たらないためです。
また、透明水彩の色をメインにしたいので、線の描き込みも抑えます。
後で見たときに、自分がわかるくらいの描き込みで十分です。
線画のスケッチは、できるだけモチーフを目の前にして行います。
線画が描けたら、家に帰って着彩しましょう。
なお、外で描ける方は、その場で色を付けてしまってもOKです。
雲から描く
それでは、色を付けていきましょう。
線画は実物を見て描きますが、色を塗るのは家でも構いません。
線を描いている間に、モチーフの形やイメージは頭に入っていますから、そのイメージを元に色をつける方がいい作品になります。
実物の色にとらわれず、自分の頭の中で編集された美しい雲を表現することでオリジナリティーが出ます。
また、自分の記憶とイメージだけを元に描くので、作品に一貫性が生まれます。
では、実際に描いていきます。
雲を描くのに使ったのは、
- セルリアンブルー
- キナクリドンローズ
- インディアンレッド
- トランスペアレントオレンジ
- オーレオリン
- バーントシェンナ
です。
灰色っぽい色をふんわりと乗せたいので、ごく薄いセルリアンブルーをいくつかに分けて置きます。
そして、ブルーが乾く前に他の色を少しづつ加えます。
このとき、雲全体に色を広げてしまわないようにします。
雲をベタ塗りしてしまうと立体感が出ません。
雲の外側は紙の白を残すようにして、雲の中心に色を置くようにすると、緩やかな逆光の効果が得られます。
色が乾いてきたら、完全に乾く前にホワイトを入れます。
白を強く残したいところなどになじませながら置いていきます。
今回は空と接している雲の部分に入れました。
最後に雲の下の方の広い部分に薄いピンク(キナクリドンローズ)を置いて、雲は完成です。
(画像では見えにくいですが…)
ピンクを置くのは、空の青と離れた色を使った方が、雲の存在感が増すためです。
実際の雲は、下に行くほど灰色の部分が多くなるかもしれませんが、ここで灰色を使ってしまうと明るさが下がり、全体的にメリハリに欠けたぼやっとした雲になってしまいます。
また、どうして青の補色であるオレンジや黄色ではなくピンクなのかというと、黄色系統の色を入れると雲全体が黄色っぽくなってしまうからです。
雲の白色を残したかったので、今回はピンクを入れています。
木を描く
次に左側に小さな木を描きます。
木はメインのモチーフではありませんが、青空と白い雲の画面でアクセントになる存在です。
オーレオリンを置いてから、フタロブルグリーンシェードを差してなじませます。
その中に、コバルトターコイズを少し入れて、鮮やかな緑の出来上がりです。
空を描く
それでは、最後に青空を塗ります。
通常、空を塗る時にはコバルトブルーをメインで使い、そこにコバルトターコイズやセルリアンブルーを置いたりします。
ウルトラマリンブルーは暗くなるので使いません。
しかし、今回は雲の白色とのコントラストを強く見せたかったので、コバルトブルーをメインに、コバルトターコイズとウルトラマリンブルーを入れています。
画像の水色っぽい部分がコバルトターコイズで、青が濃い部分にウルトラマリンブルーを差しています。
おわりに
絵の具が乾けば完成です。
なお、今回は雲、木、空と分けて塗りました。
このように、薄い色のエリアと濃い色のエリアを分けて塗る場合は、必ずエリアごとにしっかりと乾かしてから次に移るようにしてください。
そうでないと、雲に木の緑が混じったり、空の青色が侵入したりしてしまいます。
最後に日付とサインを入れて完成です。