透明水彩はマット水彩とは違った技法で色を置いていきます。
水だけで絵具を制御するので、とても使いやすい画材でもあります。
今回は透明水彩の技法を紹介していきます。
水で濡らして絵具を置く
はじめに紹介するのは、塗りたい範囲に透明の水を塗ってから色を置く技法です。
Wet In Wet(ウェット イン ウェット)の一つです。
水、色ともに、すべて濡れている状態で作業を行います。
下の二つはどちらも円形に水で濡らしてから、その中に違った色を置いています。
こちらは、レンブラントのオーレオリンを下半分に、シュミンケホラダムのフタロブルーを上半分に置いています。
左下が白いのは、最初にきちんと水で濡らせていなかった部分ですね。
真ん中辺りが白いのは、絵具が広がっていないためです。
こちらは、レンブラントのキナクリドンローズを下半分に、シュミンケホラダムのウルトラマリンブルーを上半分に置いています。
先ほどの黄色や青とさほど変わらない配置で色を乗せていますが、ピンクが全体に広がっているのが分かります。
色によって、広がりやすい色と広がりにくい色があります。
ウルトラマリンブルーは広がりにくい色ですね。
もう一つの黄色と青は広がりやすい色なのですが、水の乾き具合や絵具の量の関係で広がらなかったのかもしれません。
同じように水を置いてから、色を入れていく方法をとったのがこちらです。
使っている色は先ほどと同じです。
こちらでは、水で円を描き、円全体に黄色をなじませてから、中心に青色を置いています。
中心部分は黄色と青色がよくなじんで、緑色に混色できています。
こちらも同じ手順で色を置いています。
やはり青とピンクが混じって、紫色が出てきていますね。
水を置いてから色を配置する技法は、決まった場所を塗るときに便利です。
あらかじめ水で色を塗る範囲を決定できるので、塗りたくないところに色が付いてしまう、ということがありません。
範囲指定が容易なのです。
色を置いて、乾かないうちに別の色を置く
次もWet In Wetの一つです。
今度は、色を先に塗ってしまってから、別の色を加えます。
これは、黄色で円を描いてから青色を上半分に置いています。
色の広がりは、紙の乾き具合と傾きで決まるので、実際に塗る際は水平な机の上で行ってください。
最初に水を置いていないので、全体的に色が濃いですね。
こちらも透明の水を先に置かずに、絵具だけで塗っています。
ピンクで円を描き、青色を上半分に置きました。
このテクニックは時間との勝負です。
先に水を置く方法であれば水が乾くまで余裕がありますし、たっぷり水を塗ってやれば時間に急かされずにゆっくり作業できます。
しかし、こちらの技法は水を置かない分乾く時間が早いです。
それに、最初の色をたっぷり置くとそれだけ色が濃くなりますから、分量で調整することも出来ません。
ただ、応用が利く技法なのでわたしはよく使います。
乾かしてから重ね塗り
今までは濡れた絵具同士を紙の上で混色させるテクニックでした。
次は透明水彩の、透明性を利用した混色です。
黄色を塗り、乾かしてから青色を重ねています。
重なった青色の下から黄色が透けて見えて、緑色になっています。
こちらもピンクを乾かしてから青色を重ねています。
透明水彩は重ね塗りをしても、下の色が透けて見えます。
その特性を生かした技法ですね。
色を置いて、水でのばす
次は、水を置かないwet in wetの応用です。
色ともう一つの色を適当においてから、部分的に水でのばすとこのようになります。
使っている絵具は、W&Nのコバルトブルーとコバルトターコイズライトです。
この二色はコバルト系だからなのか、相性がいいように思います。
この技法はとても使い勝手がいいのです。
水でのばす部分を調整することで、濃い部分と紙の白のコントラストを残しながら、グラデーションをかけられます。
髪の毛のハイライトを白く残しながら質感を出したり、薄く置いて肌の透明感を出したりなど、様々な応用が利きます。
わたしはこの技法を使うことが多いです。
紙の上で、複数混色
こちらも応用編です。
先ほどと同じように、乾いた紙に絵具を置いてから一部を水でのばしています。
全体にオーレオリンを置いてから、W&Nのカドミウムレッド、アリザリンクリムソン、ウィンザーグリーン、バーントシェンナ、シュミンケホラダムのトランスペアレントオレンジを入れています。
暗い色を作る際、パレット上で複雑な混色をすると濁ってのっぺりした色になりがちです。
透明水彩は色と色のきわも魅力だと思っているので、できるだけ紙の上で混ぜるようにしています。
その際もあまり筆でいじらず、絵具が混ざるさまを見守っていると面白い結果になりますよ。
ドライブラシ
筆の水分量を減らして塗る(擦らせる)と水彩紙のテクスチャがはっきり出ます。
このまま塗りにも使えますし、重ね塗りの時のアクセントとしても面白いですね。
ホワイトの使い方
基本的に、透明水彩において白は紙の色を残して表現します。
空白 = 白
ですね。
そちらの方が絵具の透明感が出て美しいからです。
しかし、ホワイトを全く使わないわけではありません。
ホワイトはハイライトを表現するのにとても便利です。
空間に余裕があれば、置いた絵具を水でのばして光を表現出来ます。
ただ、狭い部分を塗りながら強い光を表現したいときは、ホワイトを使のがおすすめです。
まず、wet in wetで好きな絵具を乗せて(一色でもかまいません)、乾き始めた頃を見計らって少しずつホワイトを加えます。
完全に乾いたら、一番明るい部分にホワイトをガツンと乗せて完成です。
目のハイライトや、強い逆光の表現に向いています。
おわりに
透明水彩の技法は基本的に濡れているか、乾いているかの組み合わせです。
今回ご紹介したのは、わたしが絵を描くときに使っているテクニックです。
上記の方法を使えば、十分楽しんで絵を掛けると思います。
ただ、他にも削ったり加えたり盛ったりなどなど、様々な技法があります。
透明水彩に他の画材を組み合わせれば、それこそ工夫する人の数だけあるのでしょう。
いろいろなやり方を試して、新しい技法を発見するのも楽しいですね。