水彩絵具は小学校でも使っている、わたしたちにとって親しみのある画材ですよね。
今回は、この水彩絵具の中でも、透明水彩を取り上げてご紹介していきます。
もくじ
透明水彩って?
水彩絵具は、透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)の2種類に分かれるのです。
どちらも、色の粉である顔料と接着剤になるアラビアガム(アラビアゴム)とを混ぜて作られます。
透明水彩はアラビアガムの分量が多く、逆に不透明水彩は顔料の分量が多くなっています。
アラビアガムの分量が多いと、色を塗った時に顔料と顔料の隙間ができやすいので透明感が出ます。
一方で、顔料が多いと、その隙間ができにくいので、不透明になるのです。
実は、わたしたちが子供の頃に使っていた水彩絵具は、透明水彩と不透明水彩の中間の性質を持つマット水彩と呼ばれるものです。
透明っぽくも、不透明っぽくも使える絵具ですが、不透明水彩に近いような感じがします。
透明水彩のメリット
透明水彩は、とても特徴的な絵具です。
水の美しさを表現できる画材で、透明水彩を上回るものはないかもしれません。
透明水彩のメリットはこの4つです。
- 透明性
- キラキラ光るような美しさ
- 絵具を制御しやすい
- パレットは洗わなくてOK
以下で詳しく見ていきましょう。
透明性
透明水彩はその名前からも分かる通り、とても透明感のある絵が描ける画材です。
どれくらい透明なのかというと、何度塗り重ねても、下の色を完全に覆い隠すのが難しいくらいです。
その透明感こそが透明水彩の強みであり、魅力でもあるのです。
透明水彩の色合い、透明感、質感などは、この画材だけのもので、他の画材で再現するのはとても難しいです。
キラキラ光るような美しさ
透明水彩は、一つ一つの色がとてもきれいです。
その透明感もあって、単色の美しさではアクリル絵具や油絵具の上を行くかもしれません。
こちらはチューブから出した絵具を、少し伸ばした状態です。
どうですか?
水に濡れて、とてもキラキラ輝いていますよね。
水が乾くと、その水の流れや、乾き方のとおりに絵具が定着するので、乾いた状態でも水の存在を感じられるのです。
絵具を制御しやすい
透明水彩は、油彩やアクリルなどの画材と比べて、思い通りに絵具を扱うことができます。
まず、他の画材に比べて粘り気が少ないので、非常に細い線が描けます。
細い線が描けるということは、細密画が描きやすいということです。
次に、絵具をうんと薄めても、広がりすぎるということがありません。
油彩やアクリルだと、絵具を薄めなかったら細かい表現ができないのですが、薄めすぎると広がり過ぎてしまって、制御が難しいのです。
それに比べ、透明水彩は(もちろん色や紙にもよりますが)広がり方が緩やかで、筆で操作しやすいのですね。
パレットは洗わなくてOK
透明水彩は、とっても準備と片付けが楽な画材です。
人によっては最大のメリットになるかもしれません。
わたしたちが子供の頃使っていた水彩絵具は、授業の終わりにパレットを洗っていましたよね。
マット水彩は一度乾くと、水で溶いても綺麗な絵具にならないからです。
一方、透明水彩は、パレット上の絵具が乾いてしまっても、水で溶かせば何度でも綺麗な色が蘇ります。
そのため、透明水彩にはチューブ絵具の他に、乾かして固めた固形絵具もあります。
四角いものが固形絵具で、小さいキャラメルくらいの大きさです。
このように、使いたい時はパレットを広げるだけ、片付けるときはパレットを閉めるだけ。
この手軽さはなかなかありません。
透明水彩のデメリット
色彩の美しさが特徴的な透明水彩ですが、デメリットもあります。
- 隠蔽力が低い
- 広い面を綺麗に塗りにくい
- 乾いても濡らすと溶け出す
- 修正できないことが多い
この4つを見ていきましょう。
隠蔽力が低い
透明水彩は透明ですので、下の色を覆い隠すことができません。
例えば、「家の屋根を黄色に塗ったけど、やっぱり青色がいいな」と思っても、綺麗な青色に塗りなおすことはできないのです。
実際にこれをやると、黄色と青色が重なって緑色の屋根になってしまいます。
重ね塗りで混色と同じような効果が出るのは、透明水彩の面白いところですが、望んでいないときは困りますよね。
広い面を綺麗に塗りにくい
先ほどのメリットの方で、透明水彩は絵具を制御しやすいとご紹介しました。
細かい描き込みが得意で、薄めても広がりにくいです。
一方で、広い面積を均一に塗るのには向いていません。
色が広がりにくいのと、乾く時に色むらができやすいためです。
色むらは滲みとも言って、透明水彩の特徴的なテクスチャなのですが、コントロールするのは難しいです。
どうしても広い面を綺麗に塗りたいときは、アクリル絵具を薄く溶いて、重ね塗りするのがおすすめですよ。
こちらの記事を参考にしてみてくださいね。
fa-arrow-circle-rightアナログできれいにベタ塗りする方法
乾いても濡らすと溶け出す
こちらも透明水彩の何度でも溶かせる、という特徴の裏返しですね。
紙に絵具を塗って乾かしても、もう一度水で濡らすと溶け出してしまうことがあります。
特に濃い色は、溶け出した時の被害が大きくなるので、最後の方に塗るなどの工夫が必要です。
紙によっては溶け出しにくいものもありますし、しっかり乾かしてから手早く色を重ねることで、ある程度は回避できますよ。
修正できないことが多い
透明水彩を使って絵を描くと、基本的に修正ができません。
小さな修正ならできることがありますが、
- 「黄色を塗ったけれど、やっぱり紫にしたい」
- 「人物の位置をずらしたい」
などの大幅な変更ができないのです。
アクリルや油彩なら大きな修正にも対応できるのですが、透明水彩は基本的に一発描き、失敗したらはじめから描き直しの画材なのです。
おわりに
同じ水彩でも、マット水彩と違って透明水彩は知らない方も多い画材です。
ですが、その透明感やにじみの美しさから、人気の高い画材です。
よく目にするイラストや絵画も、実は透明水彩で描かれていた、ということもありますよ。
色がきれいで、片付けも楽。部屋も汚さないし、手軽に使える。
とても魅力的でおすすめが画材です。